Quantcast
Channel: ホタルの独り言
Viewing all 489 articles
Browse latest View live

ウラミスジシジミ

$
0
0

 ウラミスジシジミ(Wagimo signatis)は、シジミチョウ科ウラミスジシジミ属(Wagimo属)のゼフィルスで、鳥取県伯耆大山で採集された事から、かつては「ダイセンシジミ」と呼ばれていたが、現在では「ウラミスジシジミ」に統一されている。アカシジミに似るが、一回り小さく、翅裏は赤褐色地に白条紋があり、翅表は周囲が黒褐色で、中央部は青紫色に輝くので容易に区別できる。クヌギ、カシワ、ミズナラ、コナラ等を食樹としているため、雑木林で見られるが、分布は局地的で個体数も少ない。環境省RDBに記載はないが、東京都RDBでは絶滅危惧Ⅰ類として記載している。
 ウラミスジシジミは、昨年、一昨年と計画に入れることができず、ようやく今年撮影計画に組み込んだ。既に関東の平地部では時期的遅いため、福島の磐梯山を選んだ。結果は、猪苗代湖畔の雑木林にて、早朝、下草に降りていた所を偶然に見つけたが、近寄ると梢に舞い上がってしまい、証拠程度の2カットのみの撮影。棒で枝をゆすると、撮影不可能な場所へと飛んで行ってしまった。その後は、見つけることができなかった。

 ウラミスジシジミは、初見初撮影の種で、当ブログのリスト「鱗翅目」で116種類目、全25種類のゼフィルスでは20種類目となる。

 勝負の7月がスタート。昆虫たちの発生が一番多い時期なので、予定も今年中で一番盛り沢山だ。
 さて、5日(土)午前6時、雨の東京を出発し、新潟県十日町市へ。関越道の水上まではずっと雨だったが、関越トンネルを抜けると天候は曇り。所々に晴れ間も見える。 10時に現地入りする頃には、初夏の日差しが照りつけていた。ある未撮影のトンボ1種を撮るためであったが、池のほとりで2時間待機するも現れず断念。
 すぐさま新潟を出発し、国道117号線、252号線、只見経由で福島県の磐梯山を目指す。目的は、今回掲載したウラミスジシジミとその他おまけ。猪苗代湖畔に16時着。何度か訪れたことのある第一ポイントのロケハンを終え、磐梯山へ移動し、第二ポイントを探す。中腹の林道をくまなく走り、第二ポイントを決定。一旦、下山してレストランで夕食。この日初めての食事だ。その後、再び磐梯山へ戻り車中泊。
 6日(日)午前4時から行動開始。7kmほど離れた第一と第二ポイントを行ったり来たりしながら撮影し、最後は五色沼へ移動して正午過ぎに終了。走行距離870kmの遠征であった。
 今回の目的であった、あるトンボとウラミスジシジミ。出会うことさえ出来なかったトンボは、また違う場所で探索する計画を追加し、証拠程度にしか撮れなかったウラミスジシジミは、次週の長野県遠征の中に組み込もうと思う。どうか毎週末、雨が降りませんように!

IMG_3441.jpg

ウラミスジシジミ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 + Kenko TELEPLUS 2X
絞り優先AE F8.0 1/160秒 ISO 3200 -1EV(撮影地:福島県会津若松市 2014.7.6 5:55)

IMG_3442.jpg

ウラミスジシジミ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 + Kenko TELEPLUS 2X
絞り優先AE F8.0 1/100秒 ISO 3200 -1EV(撮影地:福島県会津若松市 2014.7.6 5:56)


エゾミドリシジミ(福島)

$
0
0

 エゾミドリシジミ(Favonius jezoensis)は、昨年7月に奥日光で撮影(エゾミドリシジミ)しているが、綺麗な翅表は撮れていなかった。今回の福島遠征では、主目的の他として、会津若松市の雑木林にエゾミドリシジミの生息を確認し、夕刻にテリトリーを見張る行動を観察することができた。その際、ピントも甘く低画質の画像ではあるが、オオミドリシジミ属(Favonius属)特有の青い輝きを撮影できたので掲載する。
 7月中に、別の場所で再度エゾミドリシジミの開翅を狙う計画があるので、その時は、高画質で撮影したい。

IMG_3443.jpg

エゾミドリシジミ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 + Kenko TELEPLUS 2X
絞り優先AE F8.0 1/800秒 ISO 1600 -1EV トリミング(撮影地:福島県会津若松市 2014.7.5)

IMG_3444.jpg

エゾミドリシジミ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 + Kenko TELEPLUS 2X
絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 3200 -1EV トリミング(撮影地:福島県会津若松市 2014.7.6)

磐梯山麓のゼフィルス

$
0
0

 「会津磐梯山は宝の山・・・」自然が豊かで昆虫も多く、ミドリシジミの仲間(ゼフィルス)も多産する。今回は、ロケハン不足と午前中の数時間という短時間、また時期的な問題もあり、磐梯山麓においては、掲載の4種類しか確認そして撮影できなかった。しかしながら、前回、前々回の記事に掲載したエゾミドリシジミ、ウラミスジシジミも、また他にも、ハヤシミドリシジミ、ウラジロミドリシジミ、アイノミドリシジミ、オナガシジミ、ウスイロオナガシジミも生息していると言われているから、時期や時間、そして探索場所を広範囲に拡大すれば撮影できる可能性は高い。来年以降、計画に余裕ができたら、何度か通ってみようと思う。

 今回掲載した4種は、ゼフィルスの中でも普通種である。アカシジミ、ウラナミアカシジミ、ミズイロオナガシジミは平地性で東京都多摩地区の雑木林でも見られる。
 ジョウザンミドリシジミは山地性で、標高1,000m付近のミズナラ林等には必ずいると言っても過言ではない。午前7時~10時頃の活動時刻では、森のギャップのあちこちでオス同士の卍飛翔を見ることができるし、下草でテリトリーを見張る個体もいるから撮影も容易だ。光の当たり具合で、翅表の色が変化するのも、美しい。
 今回、ジョウザンミドリシジミの活動をずっと観察してみたが、午前10時頃にオスの卍飛翔やテリトリーを見張る行動は終了し、その後、一部の個体は地面に降りて吸水行動をしていた。吸水が終わると、下草に止まってじっとしており、しばらくすると、クマザサの茂みの中に隠れていくという行動であった。

IMG_3445.jpg

ジョウザンミドリシジミ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 + Kenko TELEPLUS 2X
絞り優先AE F8.0 1/1000秒 ISO 800 -1EV(撮影地:福島県耶麻郡猪苗代町 2014.7.6)

IMG_3446.jpg

ジョウザンミドリシジミ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 + Kenko TELEPLUS 2X
絞り優先AE F8.0 1/1000秒 ISO 1250 -1 1/3EV(撮影地:福島県耶麻郡猪苗代町 2014.7.6)

IMG_3447.jpg

ジョウザンミドリシジミ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 + Kenko TELEPLUS 2X
絞り優先AE F8.0 1/1000秒 ISO 1000 -2EV(撮影地:福島県耶麻郡猪苗代町 2014.7.6)

IMG_3448.jpg

アカシジミ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 + Kenko TELEPLUS 2X
絞り優先AE F8.0 1/500秒 ISO 3200 -1EV(撮影地:福島県耶麻郡猪苗代町 2014.7.6)

IMG_3449.jpg

ウラナミアカシジミ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 + Kenko TELEPLUS 2X
絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 3200 -1EV(撮影地:福島県耶麻郡猪苗代町 2014.7.6)

IMG_3450.jpg

ミズイロオナガシジミ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 + Kenko TELEPLUS 2X
絞り優先AE F8.0 1/800秒 ISO 2500 -1EV(撮影地:福島県耶麻郡猪苗代町 2014.7.6)

アマゴイルリトンボ(ペア)

$
0
0

 アマゴイルリトンボ(Platycnemis echigoana)は、モノサシトンボ科グンバイトンボ属で、福島・山形・新潟・長野・青森の5県のみに分布し、生息地も極めて局所的というイトトンボで、環境省RDBに記載はないが、山形県・新潟県のRDBでは準絶滅危惧種、長野県のRDBでは絶滅危惧Ⅱ類として記載している。
 2011年9月に福島県会津若松市の湿原で撮影しているが、その場所での生息を確認できたことは、学術的に貴重なものではあるが、季節外れの1頭で写真的には構図等に不満を持っていたため、今回、福島遠征の締めとして、同県のアマゴイルリトンボが多産する池沼を訪れた。
 駐車場に車を止めて、水辺の道を歩くとすぐに下草に止まっているアマゴイルリトンボに出会った。モノサシトンボ科は、水際ではなく、水辺の林や草むらにいることが多い。その後も、道の脇の草むらのあちらこちらで交尾をするペアも見ることができた。他のトンボは、ヨツボシトンボ、エゾトンボ、エゾイトトンボを確認したが、一番多いのが、アマゴイルリトンボであり、極めて貴重な生息地である。

IMG_3451.jpg

アマゴイルリトンボ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F8.0 1/160秒 ISO 200 -1EV(撮影地:福島県耶麻郡北塩原村 2014.7.6)

IMG_3452.jpg

アマゴイルリトンボ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F3.5 1/800秒 ISO 200 +2/3EV(撮影地:福島県耶麻郡北塩原村 2014.7.6)

IMG_3453.jpg

アマゴイルリトンボ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F8.0 1/160秒 ISO 1250(撮影地:福島県耶麻郡北塩原村 2014.7.6)

IMG_3454.jpg

アマゴイルリトンボ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F3.5 1/500秒 ISO 200 +1EV(撮影地:福島県耶麻郡北塩原村 2014.7.6)

ヒメシジミ(開翅)

$
0
0

 ヒメシジミ(Plebejus sngus micrargus)は、北海道には、北海道亜種が広く分布し、本州と九州(九重高原のみ)には、本州・九州亜種が分布しているが、西に進むに従って山地性となり、分布は局所的である。環境省RDBには準絶滅危惧に、多くの都道府県のRDBに絶滅危惧Ⅰ類、絶滅危惧Ⅱ類として記載されている。東京都と神奈川県では絶滅としている。
 ヒメシジミは、過去に群馬県と福島県で撮影し掲載もしているが、いずれも翅は擦れ、色も褪せた個体ばかりであった。今期、ようやく綺麗な翅表のヒメシジミを撮影することができたので掲載。写真1と2は、7/5に新潟県の魚沼スカイライン(十二峠)で撮影した個体(オス)で、3~4は、今回の長野遠征時、霧ヶ峰高原の踊場湿原で撮影した個体(オス)である。踊場湿原(池のくるみ)のヒメシジミは、大型で青味が強く、たいへん美しい個体であった。

 今回の長野遠征は、霧ヶ峰、池の平湿原(東御市)、鬼無里経由で白馬入りという行程。それぞれの箇所に違った種類のチョウを目的として挑んだが、霧ヶ峰では目的を達成できず、池の平湿原では不完全燃焼、白馬においては、目的のチョウを目前にしながら違う種類と思い込んでしまい、いい加減な1カットのみという失態。あれもこれもと欲張り過ぎて、時間を決めて移動した結果かも知れない。次の三連休は、山岳遠征を予定。どうか雨が降りませんように!

IMG_3455.jpg

ヒメシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F5.6 1/320秒 ISO 200(撮影地:新潟県十日町市 2014.7.5)

IMG_3456.jpg

ヒメシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F5.6 1/320秒 ISO 200(撮影地:新潟県十日町市 2014.7.5)

IMG_3457.jpg

ヒメシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F6.3 1/320秒 ISO 800 -1/3EV(撮影地:長野県諏訪市霧ヶ峰 2014.7.12)

IMG_3458.jpg

ヒメシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F6.3 1/320秒 ISO 320(撮影地:長野県諏訪市霧ヶ峰 2014.7.12)

IMG_3459.jpg

ヒメシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F6.3 1/160秒 ISO 200 +2/3EV(撮影地:長野県諏訪市霧ヶ峰 2014.7.12)

ミヤマモンキチョウ

$
0
0

 ミヤマモンキチョウ(Colias palaeno)は、浅間山系及び飛騨山脈の森林限界(1,800m)以上の高山帯にのみ生息するシロチョウ科の高山蝶で、 Colias palaeno aias(浅間山系亜種)と Colias palaeno sugitanii(飛騨山脈亜種)という2亜種に分類されている。
 普通種のモンキチョウよりもひと回り小さく、オスは、地色が黄色で翅表の外縁には黒い帯模様があり、翅縁・触角・脚がピンク色なのが特徴で、高山帯の岩礫地に生育するクロマメノキを食草としている。クロマメノキは、別名アサマブドウともいい、ブルーベリーに似た実は食用になる。
 ミヤマモンキチョウは、マニアの採集とクロマメノキの盗掘による減少が著しく、2亜種とも環境省RDBでは準絶滅危惧(NT)として記載され、群馬県では絶滅危惧Ⅰ類、長野県では準絶滅危惧種、富山県・岐阜県では、絶滅危惧Ⅱ類に選定している。また、長野、群馬、富山では天然記念物にも指定している。

 ミヤマモンキチョウは、2011年7月に長野県東御市にある湯の丸山(標高2101m)において証拠程度の一枚を記録したのみで、昨年、湯の丸山では、ミヤマシロチョウを撮影しただけでミヤマモンキチョウには出会えなかった。そこで今年は、ミヤマモンキチョウが多産すると言われる同市にある池の平湿原(標高2000m)に行ってみた。
 湿原に到着すると、すぐに1頭の黄色いチョウが目に入ったが、ただのモンキチョウ。見渡してみるが、他には何も飛んでいない。遊歩道を歩いて行くと一角にクロマメノキの群落があり、そこにミヤマモンキチョウはいた。10頭以上は飛んでいるだろうか。しかし、遠くて写せない。また、ちょうど活発に飛び回る時間帯。小一時間ほど、その場で観察していると、ようやく1頭が、何とか写せる距離の所に止まってくれた。満足できる結果ではなく不完全燃焼だが、ミヤマモンキチョウの特徴だけは捉えたと思う。

IMG_3460.jpg

ミヤマモンキチョウとクロマメノキ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4
絞り優先AE F5.6 1/500秒 ISO 1000 +2/3EV トリミング(撮影地:長野県東御市池の平湿原 2014.7.12)

IMG_3461.jpg

ミヤマモンキチョウ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4
絞り優先AE F5.6 1/500秒 ISO 250 +2/3EV トリミング(撮影地:長野県東御市池の平湿原 2014.7.12)

スジボソヤマキチョウ(夏眠前)

$
0
0

 スジボソヤマキチョウは、昨年9月に山梨県山中湖村で夏眠後の個体を、そして今年5月に長野県白馬村で越冬後の個体を撮影しているが、今回、羽化したばかりの夏眠前のスジボソヤマキチョウを撮影した。
 東御市の池の平湿原から白馬村へ向かうルートに鬼無里(きなさ)を通る国道406号線を選んだ。(選んだのは、私ではなくナビだが・・・)途中、車窓からゼフィルスの卍飛翔が見えたので、種類の特定と休憩も兼ねて、車を路肩に止め観察に向かった。ゼフィルスの特定には至らなかったが、時間と環境からメスアカミドリシジミと思われた。
 その後、道端の草地を何気なく覗くと、5頭のスジボソヤマキチョウが吸蜜していた。レモン・イエローがとても美しい。中には、モンシロチョウほどの大きさしかない小さなスジボソヤマキチョウもいる。盛夏になる頃は、どこかで夏眠するため、次にお目にかかれるのは9月になってしまう。すぐにトランクからカメラを出して、スジボソヤマキチョウを撮影。時折、オスとメスのランデブーも見られ、マニュアルでシャッターを切るが、そう簡単には写せない。

 スジボソヤマキチョウとの偶然の出会いに感動したが、それよりも何よりも「鬼無里」という地区に感動した。今まで見た事のない秘境の山里でありながら、豊かな自然が手に触れることのできる距離にあるのである。ミズバショウ大群落やホタルの里としても有名だ。魅惑的な地名も良い。

IMG_3462.jpg

スジボソヤマキチョウ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F5.0 1/500秒 ISO 200 +1EV(撮影地:長野県長野市鬼無里 2014.7.12)

IMG_3463.jpg

スジボソヤマキチョウ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F5.0 1/640秒 ISO 200 +1EV(撮影地:長野県長野市鬼無里 2014.7.12)

IMG_3464.jpg

スジボソヤマキチョウ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F2.8 1/1000秒 ISO 200 +1EV(撮影地:長野県長野市鬼無里 2014.7.12)

山巡り日記(長編)

$
0
0

 7月三連休の初日と2日目は、新穂高、乗鞍、白馬、八ヶ岳の山麓を巡り、3日目は、山麓ではなく、山梨県内の標高およそ1,700mの山頂まで登ってきた。山が好きなわけではなく、そこに生息する昆虫たちに出会うためである。

 金曜日の夜、帰宅後すぐに出発し、岐阜県高山市奥飛騨温泉郷に午前0時着。登山客用の駐車場に止めて仮眠。朝5時から蒲田左俣林道をわさび平小屋まで5時間かけて往復した。初めて訪れた場所で、雄大なアルプスの谷間という絶景に心躍るが、天気は曇り時々雨、雨、雨!昆虫の姿はない。
 わさび平小屋から引き返す時に、青い夏空と太陽が数分だけ覗く。その時、上空を滑空しながら川の向こうへ飛んでいったオオイチモンジを発見し、このサプライズをと追いかけたが、その大きさと優雅さに感動して終わり。結局、本来目的としたチョウにも出会えず、ヒョウモンチョウを撮っただけで下山。途中、捕虫網を持った輩4名とすれ違う。睨みながら、心の中で「熊に食われろ!」と叫んだ。

 新穂高を正午に出発し、トンボ目的で乗鞍高原へ向かう。乗鞍高原の天気は曇り時々晴れ。池に到着した時には目当てのトンボを確認したのだが、すぐに居なくなってしまった。池の辺で1時間ほど待機したが、一向に姿を現さない。
 しばらくすると、雷鳴が・・・。乗鞍岳はすでに雨雲で見えない。これはヤバい。トンボは諦め駐車場へ急ぐが、林道脇の下草に、先月、なかなか止まらずに撮影に苦労したオオミスジが、たくさん止まっている。こんな人里離れた高原にいるとは驚きである。証拠に1枚。すると雨がポツポツと降りだした。車に戻り、カメラをしまった途端に豪雨。結局、ここでも目的は達成できず、今度は、乗鞍高原から白馬村へ移動。

 白馬村の無料駐車場で車中泊。やることも無いので朝4時半に目覚ましをセットして20時に就寝。寝心地は悪いが、平日よりも睡眠時間は長い。翌朝、天気は晴れ。早速、先週見つけたポイントに出向き、何とか未撮影だった目的のチョウ(後日掲載)の撮影を果たし、今度は、八ヶ岳の南麓に移動。
 八ヶ岳は、車中泊の際に急に思い立って行ったためポイントを絞れず、また時期も遅かったのだろう、探索のみで終了し、正午に自宅へ戻る。

 三連休3日目は、午前4時から登山を開始し、標高およそ1,700mの山頂に5時半着。先月21日にも登っているが、時期が早すぎて目的を果たせなかったので、再挑戦である。
 前回に比べてとても多くの花が咲いている。多摩ニュータウン植物記の多摩NTの住人さんや Granma のデジカメ写真日記のGranmaさんが訪れたら、きっと喜ばれるであろう綺麗な花々。チョウも花が多く咲く時期に合わせて羽化するのだと改めて実感する。
 私は花は撮らず「ブヨ」に集られながら2時間待機。曇りで太陽が出ずイライラしたが、ようやく念願のチョウの撮影(後日掲載)に成功し、またここでは、捕虫網を持った輩にも出会わず、気分良く下山。
 道中、まったく昆虫の姿はなかったが、登山道入口近くのギャップ(林内にぽっかりあいた空間)で飛び交うチョウを見つけた。4頭のアイノミドリシジミが卍飛翔のバトル中。かなり距離があるが、目線の高さに止まったので証拠撮影。70-200mmレンズなのでトリミングして掲載した。このアイノミドリシジミは、次の週末に、奥日光で再挑戦の予定。

 こうして三連休は、未撮影の2種を除いては何とか目的を達成することができた山巡りであったが、驚いたのは、行く先々のすべての場所にクロマドボタルが多数生息していたことと、乗鞍高原の一の瀬園地においては、スジグロボタルに出会ったことだ。成虫に形態的差異は見られなかったが、地域特性上、地域固有の生態的な特性があるかもしれない。今後の研究課題である。

IMG_3465.jpg

ヒョウモンチョウ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F5.6 1/250秒 ISO 2000(撮影地:岐阜県高山市新穂高 2014.7.19)

IMG_3466.jpg

オオミスジ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 + Kenko TELEPLUS 2X
絞り優先AE F8.0 1/640秒 ISO 3200 -2/3EV(撮影地:長野県松本市乗鞍高原 2014.7.19)

IMG_3467.jpg

アイノミドリシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F6.3 1/320秒 ISO 640 トリミング(撮影地:山梨県 2014.7.21)

IMG_3468.jpg

アイノミドリシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F6.3 1/320秒 ISO 640 トリミング(撮影地:山梨県 2014.7.21)


白馬のゼフィルス

$
0
0

 ハヤシミドリシジミ(Favonius ultramarinus ultramarinus)は、シジミチョウ科オオミドリシジミ属(Favonius属)のゼフィルスで、昨年の東京都内にて、そのウルトラ・マリンブルーの翅表を撮影し、すでに「ハヤシミドリシジミ」として掲載いる。
 オオミドリシジミ(Favonius orientalis)も、同じくシジミチョウ科オオミドリシジミ属(Favonius属)のゼフィルスで、こちらも昨年の東京都内にて撮影済みで、証拠程度ではあるが、「オオミドリシジミ」として掲載しているので、参照いただきたい。

 さて、2週連続で長野県白馬村にゼフィルス探索のため訪れた。写真2と3は、12日の霧ヶ峰~池の平湿原(東御市)~鬼無里経由で白馬入りした時のもの。写真1および4と5は、 19日の新穂高~乗鞍を経て、20日に12日とまったく同じ場所で撮影したものだ。白馬村の同じ場所を2週連続訪れた理由は、次の記事で明らかにするとして、今回、特筆すべきは、写真4および5のゼフィルスについてである。
 19日18時。ポイントで観察していると、ハヤシミドリシジミに交じってカシワの木の周りを高速で飛ぶ小さなゼフィルスが目に入った。ハヤシミドリシジミのオス同士が近づくと、すぐに卍飛翔が始まるが、この小さなゼフィルスは、ハヤシミドリシジミに近づいても、卍飛翔にはならない。
 翌早朝、撮影するためポイントに向かう。夜中に雨が降ったため、カシワの木の下草に降りていると思い探索すると、案の定、数頭のゼフィルスが葉に止まっていた。ウラミスジシジミと思われるチョウもいたが、飛ばれてしまい断念。昨日の小さなゼフィルスを探すと、ススキの葉に止まっていた。ハヤシミドリシジミより一回り小さい。
 かなり翅が擦れていて、種類を特定するのが困難な状況のため、「蝶鳥ウォッチング」のyoda氏に同定を依頼したところ、 "「オオミドリシジミ」と思われるが、「オオミドリシジミ」の特徴が明確ではなく、まるで同属の「ウラジロミドリシジミ」との交雑種であるかのような不思議な個体である。" との事。翅が擦れていなければ、もっと特徴がはっきりしたのであるが、一応、オオミドリシジミ(?)という表記にしておきたい。念のため、現在yoda氏を通じて専門家に同定を依頼中である。

IMG_3471.jpg

ハヤシミドリシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F5.6 1/160秒 ISO 3200 +1EV(撮影地:長野県北安曇郡白馬村 2014.7.20 5:25)

IMG_3469.jpg

オオミドリシジミ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 + Kenko TELEPLUS 2X
絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 3200 -1EV(撮影地:長野県北安曇郡白馬村 2014.7.12 16:42)

IMG_3470.jpg

オオミドリシジミ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 + Kenko TELEPLUS 2X
絞り優先AE F8.0 1/640秒 ISO 3200 -1 2/3EV(撮影地:長野県北安曇郡白馬村 2014.7.12 16:42)

IMG_3472.jpg

オオミドリシジミ(?)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F5.6 1/160秒 ISO 3200 -2/3EV(撮影地:長野県北安曇郡白馬村 2014.7.20 4:57)

IMG_3473.jpg

オオミドリシジミ(?)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F5.6 1/160秒 ISO 640(撮影地:長野県北安曇郡白馬村 2014.7.20 5:23)

ウラジロミドリシジミ(メス)

$
0
0

 ウラジロミドリシジミ(Favonius saphirinus)は、シジミチョウ科オオミドリシジミ属(Favonius属)のゼフィルスで、東日本ではカシワを主とし西日本ではナラガシワを食樹としている。オスの翅表は光沢ある緑色で、見る方向によっては学名にあるように濃青色(サファイア・ブルー)を呈する。メスの翅表は暗い褐色。翅裏の地色は、雌雄ともに銀白色で数本の暗色条があるが、オスでは弱いか消失する個体がある。翅裏の銀白色と翅形が丸みを帯びてることが、他のミドリシジミ類と異なり、ウラジロミドリシジミの特徴となっている。
 環境省RDBに記載はないが、開発等によるカシワ林の消失や乱獲により各地で絶滅が危惧されており、多くの府県で絶滅危惧Ⅰ類等に選定している。撮影した長野県では、準絶滅危惧種に選定している。

 ウラジロミドリシジミは、同じカシワを食樹とする同属のハヤシミドリシジミ等に比べ、生息場所が局所的と言われる。東京都内では、ハヤシミドリシジミは生息しているがウラジロミドリシジミは生息していない。そのため、生息地域の1つである長野県白馬村を選んだ。
 7月12日、15時に白馬村に到着し、まずはロケハン。遠方において、単独自力でポイントを探すのは容易なことではない。車であちこち走り回ってカシワの木を探す。あることにはあるが、しかし、まとまったカシワ林はない。2時間ほど探して、水田脇に小さなカシワの木が5本ある場所を見てみた。すると、ゼフィルスが飛んでいる。葉に止まったので写真に撮ってみるとハヤシミドリシジミのオスであった。
 翌朝、ポイントのカシワの木を叩いてみると、ゼフィルスが飛びだした。そのうち1頭が、近くの下草に降りたので、1枚撮影。角度を変えようと近づくと、飛ばれて見失う。その後は1頭も見ることができず、撮影した個体は、ハヤシミドリシジミと思い込んで、諦めて帰路に就いた。
 帰宅後、写真を現像しながら確認すると、何とウラジロミドリシジミのメスと判明。もっと丁寧に撮影すれば良かった、もっと周囲を丹念に探すべきであったと後悔。そこで、今回の再訪。 19日の夕方に同じポイントに行ってみると、4頭のゼフィルスがカシワの木の周りを飛んでいたので時期的に間に会ったと、まずは一安心。翌早朝、カシワの木にいた6頭のゼフィルス1頭1頭を丁寧に観察すると、1頭がウラジロミドリシジミ(メス)であり撮影することができた。
 今回は、メスの翅裏だけの撮影で終わってしまったので、来年は、学名にあるようにサファイア・ブルーに輝くオスの翅表を撮影するべく、白馬村に通い詰めることになるだろう。

 ウラジロミドリシジミは、初見初撮影の種で、当ブログのリスト「鱗翅目」で117種類目、全25種類のゼフィルスでは21種類目となる。

IMG_3474.jpg

ウラジロミドリシジミ(メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F2.8 1/320秒 ISO 2000 -1EV(撮影地:長野県北安曇郡白馬村 2014.7.13 4:49)

IMG_3475.jpg

ウラジロミドリシジミ(メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F5.6 1/125秒 ISO 3200 -2/3EV(撮影地:長野県北安曇郡白馬村 2014.7.20 4:57)

アサマシジミ

$
0
0

 アサマシジミ(Lycaeides subsolana)は、シジミチョウ科ヒメシジミ亜科(Polyommatinae)の属するチョウで、北海道と本州の関東、中部地方の中山帯の草原のみに分布し、ナンテンハギ、イワオオキなどのマメ科植物が食草であるが、生息地がたいへん局所的である上に、開発による生息地の破壊と生息地によって異なる班紋から採集者による乱獲が絶えず、各地で絶滅に瀕している。

 アサマシジミは、地域によってシロウマシジミ、ミョウコウシジミ等と呼ばれることもあるが、分類学上は以下の3亜種に分類され、いずれも環境省RDBでは絶滅危惧種に選定されており、北アルプス亜種(別名:ヤリガタケシジミ)は、長野県の天然記念物に指定され、条例で採集が禁止されている。

  • 中部地方中山帯亜種(Lycaeides subsolanus yaginus)絶滅危惧ⅠB類(EN)
  • 北アルプス亜種(別名:ヤリガタケシジミ)(Lycaeides subsolanus yarigadakeanus)絶滅危惧Ⅱ類(VU)
  • 北海道亜種(別名:イシダシジミ)(Lycaeides subsolanus iburiensis)絶滅危惧ⅠB類(EN)

 アサマシジミの撮影は、今年の大きな目標の1つであった。昨年から様々な地域を探索するが見つからず、今年だけでも8ヶ所廻ったがダメで、ようやく山梨県内において、アサマシジミ中部地方中山帯亜種(以下、アサマシジミという)を撮影することができた。
 早朝5時から待機し、気温の上昇とともに草の葉上に出てくるのを待つ。朝日が当たる頃には開翅が望めるはずだ。2時間待って、やっと1頭のアサマシジミが葉上に出てきた。翅裏の模様は、同属のミヤマシジミや近似種のヒメシジミと良く似ており、区別するのは容易ではない(次の記事で掲載)が、今回の撮影地区では、アサマシジミしか生息しておらず、また他の2種よりも一回り大きいことからすぐにアサマシジミと分かった。
 次は、開翅。30分ほど経つと、翅を擦り合わせ始め、ゆっくりと開翅。青色の面積は、ミヤマシジミやヒメシジミに比べて少ないが、これはこれで美しい。ちなみに北アルプス亜種(別名:ヤリガタケシジミ)は、翅表の青色が広く濃いというから、今後の目標である。
 今回は、撮影した一個体しかオスを見つけることはできなかったが、帰りがけに朝日を浴びて開翅するメスも撮ることができた。翅表は、基本的には地味な色合いだが、朝日に当たって輝くメタリックな色が印象的であった。

 アサマシジミは、初見初撮影の種で、当ブログのリスト「鱗翅目」で118種類目となる。

IMG_3476.jpg

アサマシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F6.3 1/250秒 ISO 640(撮影地:山梨県 2014.7.21)

IMG_3477.jpg

アサマシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F3.5 1/800秒 ISO 200(撮影地:山梨県 2014.7.21)

IMG_3478.jpg

アサマシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F3.5 1/500秒 ISO 200(撮影地:山梨県 2014.7.21)

IMG_3479.jpg

アサマシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F6.3 1/200秒 ISO 200(撮影地:山梨県 2014.7.21)

IMG_3480.jpg

アサマシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F6.3 1/320秒 ISO 200(撮影地:山梨県 2014.7.21)

IMG_3481.jpg

アサマシジミ(メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F6.3 1/250秒 ISO 320(撮影地:山梨県 2014.7.21)

IMG_3482.jpg

アサマシジミ(メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F6.3 1/250秒 ISO 250(撮影地:山梨県 2014.7.21)

オオトラフトンボ

$
0
0

 オオトラフトンボ(Epitheca bimaculata sibirica)は、エゾトンボ科の北方系トンボで、北海道と本州(長野県以北)に分布し、北海道や青森県等では、平地の池でも見られる。その他の地域では、標高の高い寒冷地の山岳地域の森林に囲まれた池に生息しているが、局所的で数も少ない。
 6月中旬頃に羽化し、未熟な個体は、池から離れた林内で生活し、成熟すると池に戻り、8月上旬頃まで見ることができる。同属のトラフトンボに似るが、一回り大きい。
 オオトラフトンボは、環境省RDBにはないが、撮影した群馬県のRDBでは絶滅危惧ⅠA類に選定されている。

 オオトラフトンボの撮影は、過去に2回ほど新潟県の池を訪れているが、時期が合わずに見ることすらできていなかった。そこで今回は、日光白根山(標高2,578m)にある弥陀ヶ池(標高2,250m)を訪れた。オオトラフトンボは、栃木県側の五色沼にも生息し、栃木県では唯一の生息地となっている。
 池に到着すると、池の辺を飛ぶメスのオオトラフトンボを見つけ、しばらく目で追っていると、小さな虫を捕まえた後、木の枝先に止まったので、静止画を撮ることができた。
 エゾトンボ属は、複眼がメタリック・グリーンに輝くのが特徴だが、撮影したメスの個体は、複眼が色づいておらず、まだ成熟していないようである。池の周囲をパトロールするオスのオオトラフトンボも見られなかった。成熟期は、8月上旬であると思われる。来年は、成熟した美しい複眼の個体と産卵の様子を観察したい。
 弥陀ヶ池では、他にカラカネトンボ、タカネトンボもいたが、撮影はできなかった。

 オオトラフトンボは、初見初撮影の種で、当ブログの昆虫リスト蜻蛉目で98種目となる。

IMG_3483.jpg

オオトラフトンボ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 + Kenko TELEPLUS 2X
絞り優先AE F8.0 1/400秒 ISO 3200 +2/3EV(撮影地:群馬県片品村 2014.7.26)

IMG_3484.jpg

オオトラフトンボ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 + Kenko TELEPLUS 2X
絞り優先AE F8.0 1/400秒 ISO 3200 +1/3EV(撮影地:群馬県片品村 2014.7.26)

IMG_3485.jpg

オオトラフトンボ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 + Kenko TELEPLUS 2X
絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 3200 +1/3EV(撮影地:群馬県片品村 2014.7.26)

IMG_3486.jpg

オオトラフトンボ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 + Kenko TELEPLUS 2X
絞り優先AE F8.0 1/500秒 ISO 3200 +1/3EV(撮影地:群馬県片品村 2014.7.26)

IMG_3487.jpg

オオトラフトンボ(羽化殻)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 + Kenko TELEPLUS 2X
絞り優先AE F8.0 1/800秒 ISO 3200 +2/3EV(撮影地:群馬県片品村 2014.7.26)

 さて、勝負の7月、最後の休日。25日の夜に出発し、26日の午前4時から奥日光にてゼフィルス探索。しかし、時期が早すぎて見つからず。移動して8時に日光白根山のロープウェイに乗る。山頂駅(標高2,000m)から弥陀ヶ池までは、距離にしておよそ2.7km、標高差250mだが、登って降りるので、実際はおよそ300mの登り。
 しばらくは、ゆるい上り坂で調子良く歩いていたが、途中から想像を絶する急斜面の連続。これほどの登りは過去に経験がない。東京タワーを階段で下から上まで上がるようなものだ。2時間かかって池に到着し、1時間かけてオオトラフトンボを撮影。
 午後1時に白根山の麓の駐車場を出発し、今度は、長野県の上高地へ向かう。国道120号線で沼田へ出て、関越道、上信越道を経て、長野道の松本ICで降り、浅間温泉で立ち寄り湯に入り、夕食を済ませた後、沢渡へ向かった。20時に駐車場に到着し、車内泊。
 翌27日。午前4時半に予約したタクシーで上高地へ向かう。5時10分前に釜トンネルの門が開いてターミナルで下車。そこから河童橋、明神池を通り、徳澤園の先にある橋までおよそ7.5kmを歩く。
 目標は、未撮影のチョウであったが、天候は、曇り時々雨、または晴れ。常に強風。天気が急変したとの知らせ。次から次へと黒い雲が流れ、穂高も見えない。当然、チョウの姿も無い。仕方なく河童橋へ戻るのだが、明神池の手前1kmのところで、豪雨に突風・・・まるで台風のようであった。前日と同じ好天と思って上高地入りしたが、このような悪天候になるとは思わなかった。カメラをカバンから出すことなく、15km歩いただけ。11時半のバスで沢渡へ戻った。
 奥日光、上高地遠征の二日間の走行距離は780km、歩いた距離は22km、歩いた時間12時間、撮影できたのは、掲載のオオトラフトンボのみであった。

 7月全体では、初撮影の種5種類、計画に対して70%の達成率である。経験上、初見の絶滅危惧種ともなれば、最低2回以上は生息地を訪れなければ撮影はできないから、撮影が叶わなかった種に関しては、ロケハンが来年の成功への布石となるだろう。
 8月は、2週に渡って再び長野遠征を予定しており、未撮影の種4種類の撮影が目標である。

ミヤマシジミ属

$
0
0

 アサマシジミの撮影が出来たので、同属の ミヤマシジミと近似種のヒメシジミをまとめてみた。

 ヒメシジミ、ミヤマシジミ、アサマシジミの分類は、研究者によって見解が異なっており、3種をヒメシジミ属(Plebejus属)としてまとめている場合とミヤマシジミ、アサマシジミをミヤマシジミ属(Lycaeides属)として分類している場合がある。昆虫の分類は、形態学、生態学、比較発生学など様々な知見を総合して系統分類しており、昨今ではDNAによる系統解析も行われている。上記3種に関して、どこまで研究が進んでいるのか分からないが、個人的には、ヒメシジミ属としてまとめるのがしっくりいく。ただし、ここではヒメシジミ属とミヤマシジミ属に分類し、3種の写真を並べてみた。生態に関しては、各記事を参照いただきたい。
 この3種は、形態的に良く似ており、翅裏の模様に関しては、一見、同じように見えて区別が付かない場合がある。しかしながら、斑紋の地域特性や食草、生息環境の相違、翅表の違いから判別は可能である。アサマシジミが一番大きい。尚、3種ともに環境省RDBにおいて絶滅危惧種として選定されている。

ヒメシジミ属(Plebejus属)

  • ヒメシジミ(Plebejus argus micrargus)準絶滅危惧(NT)

ミヤマシジミ属(Lycaeides属)

  • ミヤマシジミ(Lycaeides argyrognomom)絶滅危惧ⅠB類(EN)
  • アサマシジミ(Lycaeides subsolanus)絶滅危惧ⅠB類(EN)
IMG_3488.jpg

ヒメシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F6.3 1/250秒 ISO 320(撮影地:長野県諏訪市霧ヶ峰 2014.7.12)

IMG_3490.jpg

ミヤマシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F8.0 1/160秒 ISO 200 +1EV(撮影地:栃木県さくら市 2013.9.28)

IMG_3476.jpg

アサマシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F6.3 1/250秒 ISO 640(撮影地:山梨県 2014.7.21)

IMG_3457.jpg

ヒメシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F6.3 1/320秒 ISO 800 -1/3EV(撮影地:長野県諏訪市霧ヶ峰 2014.7.12)

IMG_3249.jpg

ミヤマシジミ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F8.0 1/160秒 ISO 250 +1EV(撮影地:栃木県さくら市 2013.9.28)

IMG_3479.jpg

アサマシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F6.3 1/200秒 ISO 200(撮影地:山梨県 2014.7.21)

夏草

$
0
0

 8月のスタート。すっかり自然風景写真から遠のいてしまっている。上高地や新穂高などでは、スケールの大きな光景に感動したが、こういった風景は、中判カメラのリバーサル・フィルムでなければ表現できないだろう。ペンタックス645やハッセル・ブラッドが欲しいと思う瞬間であるが、なかなか踏み切れない。紅葉の写真あたりから、Canon EOS 3 で今のレンズ群を活かしながらフィルムで撮ってみようと思う。
 さて、掲載の写真は、霧ヶ峰にて久しぶりに撮影した自然風景写真である。早朝、草原に当たる朝日の斜光が、枯れ草を柔らかく浮き出させ、背景の緑の草とのコントラストが美しかった。毎年生い茂っては枯れをくり返す夏草は、人の夢のはかなさを象徴しているとも言われる。夏の青々した草原よりも、この残った枯れ草との対比に、心が動いた。

IMG_3491.jpg

夏草
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F2.8 1/500秒 ISO 200(撮影地:長野県諏訪市霧ヶ峰 2014.7.12)

ウラキンシジミ

$
0
0

 ウラキンシジミ(Ussuriana stygiana)は、シジミチョウ科ウラキンシジミ属(Ussuriana属)のゼフィルスで、翅表は黒色だが、翅裏は文字通り「金色」をしている。北海道~九州まで分布し、丘陵地や山地の落葉樹林に生息するが生息地は局所的である。幼虫はモクセイ科のトネリコやコバノトネリコを食樹としており、成虫は、夕方に活発な活動をし、日中は葉の上に止まっていたり、白い花にも訪れると言われている。
 環境省RDBには選定されていないが、14の府県RDBにおいては、絶滅危惧種として記載している。

 さて、8月2日の土曜日は、午前4時に出発し、家内のリクエストに応えて家族4人で埼玉県行田市の「古代蓮の里」へ。13時に帰宅し、17時に岐阜県へ向けて出発。先月19日に訪れた奥飛騨温泉郷の先にある新穂高の蒲田左俣林道への再訪である。
 21時に駐車場着。猛暑を忘れる涼しさ。車内で熟睡。翌3日、午前5時。林道へ歩き出す。前回は、雨に降られて惨敗。今回は未撮影のチョウ3種類が目標である。天候は、薄曇り一時晴れ、10時から雨。山の天気は変わりやすい。結果的には、1種類は時期が遅く来年に持ち越しとなり、2種類を撮影することができた。1種が掲載のウラキンシジミであり、もう1種については、次々回の記事で紹介したい。
 ウラキンシジミは、これまでなかなか出合えなかったゼフィルスで、この林道での出会いに賭けていただけに、嬉しい結果となった。撮影した個体はオスで、翅裏は黒ずんだ金色。メスの翅裏は明るい金色をしているが、見かけたウラキンシジミは、撮影したオス1頭だけであった。

 ウラキンシジミは、初見初撮影の種で、当ブログのリスト「鱗翅目」で119種類目、全25種類のゼフィルスでは22種類目となる。
 これで、今年計画していたゼフィルスは、すべて撮影することができ、未撮影はあと3種類となった。次回の記事で「今年のゼフィルス」としてまとめようと思う。

IMG_3492.jpg

ウラキンシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F3.5 1/640秒 ISO 200(撮影地:岐阜県高山市 2014.8.3)

IMG_3493.jpg

ウラキンシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F3.5 1/640秒 ISO 200(撮影地:岐阜県高山市 2014.8.3)

IMG_3494.jpg

ウラキンシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F3.5 1/250秒 ISO 200 -2/3EV ストロボ使用(撮影地:岐阜県高山市 2014.8.3)


今年のゼフィルス

$
0
0

 ゼフィルスは、翅裏が特徴的な種類もあれば、翅表が青や緑に輝く種類もいる。出会うことさえ難しい種類もあれば、出会っても、その美しさを写すことが難しい種類も多い。それがゼフィルスの大きな魅力であり、その1枚を撮るべく、今年も各地へ探索に出かけた。結果として、本年の目標であった4種類の初撮影を達成し、全25種類のうち22種類のゼフィルスを収めることができたが、撮影済みの種類も含め、証拠程度にしか撮れていない種類も多い。来年は、撮影済みの種類は、より美しく撮ること、そしてまだ未撮影の3種類については、まず2種類(関西以西に生息)を撮影することを目標としたい。
 以下に、これまで撮影したミドリシジミ族(ゼフィルス)の分類と写真をまとめてみた。分類では、撮影済みの種類については、過去の掲載記事へのリンクを貼っている、また写真では、撮り直しした種類については、過去の画像を差し替えて掲載した。

ミドリシジミ族(Theclini)

ウラキンシジミ属(Ussuriana)

ウラゴマダラシジミ属(Artopoetes)

チョウセンアカシジミ属(Coreana)

ムモンアカシジミ属(Shirozua)

オナガシジミ属(Araragi)

ミズイロオナガシジミ属(Antigius )

アカシジミ属(Japonica)

ウラミスジシジミ属(Wagimo)

ウラクロシジミ属(Iratsume)

ミドリシジミ属(Neozephyrus)

メスアカミドリシジミ属(Chrysozephyrus)

キリシマミドリシジミ属(Thermozephyrus)

オオミドリシジミ属(Favonius Sibatani & Ito, 1942)

フジミドリシジミ属(Sibataniozephyrus Inomata, 1986)

撮影したゼフィルス

IMG_3494.jpg

ウラキンシジミ

IMG_2610.jpg

ウラゴマダラシジミ

IMG_2637.jpg

チョウセンアカシジミ

IMG_2767.jpg

ムモンアカシジミ

IMG_1799.jpg

オナガシジミ

IMG_2694.jpg

ウスイロオナガシジミ

IMG_2579.jpg

ミズイロオナガシジミ

IMG_2570.jpg

アカシジミ

IMG_3092.jpg

ウラナミアカシジミ

IMG_3442.jpg

ウラミスジシジミ

IMG_3428.jpg

ウラクロシジミ

IMG_2631.jpg

ミドリシジミ

IMG_3155.jpg

アイノミドリシジミ

IMG_3122.jpg

メスアカミドリシジミ

IMG_3167.jpg

キリシマミドリシジミ

IMG_3474.jpg

ウラジロミドリシジミ

IMG_2604.jpg

クロミドリシジミ

IMG_3097.jpg

オオミドリシジミ

IMG_3132.jpg

ジョウザンミドリシジミ

IMG_3115.jpg

ハヤシミドリシジミ

IMG_3444.jpg

エゾミドリシジミ

IMG_3409.jpg

フジミドリシジミ

オオゴマシジミ

$
0
0

 オオゴマシジミ(Maculinea arionides)は、シジミチョウ科ゴマシジミ属(Maculinea属)で、翅を広げた大きさが40mm前後もある大型のシジミチョウである。北海道渡島半島および本州東北~中部地方の高山に分布し、西限は飛騨山脈である。食草であるカメバヒキオコシ(オドリコソウ科)の群落が存在する落葉広葉樹林内の開けた草地や沢沿いの草地等に生息するが、生息地はたいへん局所的である。
 河川上流部の改修や除草剤の散布、採集家による乱獲により、各地で著しく減少しており、環境省RDBでは準絶滅危惧に、生息地のある道県のほとんどで絶滅危惧種に選定している。
 オオゴマシジミの生態は、たいへん特殊で、幼虫は孵化から2週間足らずの間にカメバヒキオコシの蕾や花を食べて終齢幼虫となる。その後はヤマアシナガアリによって巣に運びこまれ、巣内でアリの卵や幼虫を食べて成長するのである。

 オオゴマシジミの撮影は、今回が初挑戦であったが、先月のロケハンが功を奏し何とか写すことができた。ポイントに辿り着くと、網を持った先客が一人。無視をしながら三脚にカメラを撮りつけてスタンバイしていると、話しかけてきた。「オオゴマ狙いですか?・・・」高知県からわざわざ来たという。前日に採集した高山蝶を三角ケースから自慢げに取り出し、私に見せつけた。しばらくすると、網を持った輩が二人到着。狭い生息地にカメラマン1名に採集者3名。一応、私への気遣いなのだとう。無視をしているとやはり話しかけてきた。「オオゴマ狙いですか?・・・」大阪から来たという。
 さて、待機して30分ほどすると日が差し始め、オオゴマシジミがチラホラと飛び始めた。全部で4頭を確認する。葉の上に止まり開翅。何枚か撮影する。私の撮影が終了すると、確認できたすべてのオオゴマシジミは、採集者の網の中へと消えて行った。条例で採集禁止にしない限り、この地のオオゴマシジミは採集により絶滅する日も近いだろう。環境省等のレッドデータブックにも法的拘束力を持たせなと、オオゴマシジミに限らず、違法でない地区に生息する絶滅危惧種は、すべて捕りつくされ、標本箱に並ぶことになるだろう。
 帰りがけに別の場所でもオオゴマシジミを見つけて撮影したが、羽化不全のため右の前翅が伸びきっておらず、シワシワな状態。きっとこの個体は捕られずに生き延びることができるだろう。

 オオゴマシジミは、初見初撮影の種で、当ブログのリスト「鱗翅目」で120種類目となる。

IMG_3495.jpg

オオゴマシジミ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 + Kenko TELEPLUS 2X
絞り優先AE F8.0 1/1000秒 ISO 3200(撮影地:岐阜県高山市 2014.8.3)

IMG_3496.jpg

オオゴマシジミ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 + Kenko TELEPLUS 2X
絞り優先AE F8.0 1/800秒 ISO 2500(撮影地:岐阜県高山市 2014.8.3)

IMG_3497.jpg

オオゴマシジミ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 + Kenko TELEPLUS 2X
絞り優先AE F8.0 1/800秒 ISO 2500 -2/3EV(撮影地:岐阜県高山市 2014.8.3)

IMG_3498.jpg

オオゴマシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F3.5 1/500秒 ISO 200(撮影地:岐阜県高山市 2014.8.3)

IMG_3499.jpg

オオゴマシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F3.5 1/800秒 ISO 200(撮影地:岐阜県高山市 2014.8.3)

ゴマシジミ

$
0
0

 ゴマシジミ(Maculinea teleius)は、シジミチョウ科ゴマシジミ属(Maculinea属)に分類され、前述したオオゴマシジミと同属である。
 ゴマシジミの生活史もオオゴマシジミ同様に特異で、東北地方以北はナガボノシロワレモコウに、それ以外はワレモコウのそれぞれ花穂に産卵する。孵化した幼虫はそれらの花穂を食べて(白山亜種等、高標高に生息するゴマシジミは、カライトソウも食している)秋に3齢まで成長する。4齢(終齢幼虫)になると食草から地上へ降り、シワクシケアリによって巣に運ばれてシワクシケアリの幼虫や蛹を餌にして越冬し、翌年の夏にアリの巣の出口付近で蛹化・羽化して地上に出るのである。
 ゴマシジミは、北海道と本州、九州(四国では確認されていない)に分布するが、生息地は極めて局所的であり、生息地においても減少している場所が多い。
 ゴマシジミは、寄主植物である「ワレモコウ」と寄主アリである「シワクシケアリ」の存在が不可欠で高い寄主特異性を示すが、1頭のゴマシジミの幼虫は、200個体以上のシワクシケアリを食べると言われており、ゴマシジミ個体群の維持にとっては、特にシワクシケアリの生息状態が極めて重要と言える。そのシワクシケアリの生息環境は、湿った土の存在が必要条件であり、乾燥化や植物群落の遷移が進むとシワクシケアリはいなくなり、結果としてゴマシジミも全滅してしまう。そのためには、「里山」の良好な維持管理が必要で、「里山」の放棄・放置は減少の原因の1つであると言える。
 日本のみならず、ゴマシジミ属はヨーロッパにおいても生息域が急速に減少しており、特にアリオンゴマシジミ(Maculinea arion)においては、ヨーロッパ全体で危機に瀕しており、イギリスを除くアリオンゴマシジミが生息するすべての国で、減少の一途をたどっていると言われている。(イギリスでは1979年の絶滅の後、コーンウォル州とデボン州で新産地が見つかり、保全に成功している。)
 日本国内では、ゴマシジミは以下の4亜種が生息するが、いずれも環境省RDBでは絶滅危惧種として選定している。

  • ゴマシジミ北海道・東北亜種(Maculinea teleius ogumae)準絶滅危惧(NT)
  • ゴマシジミ本州中部亜種(Maculinea teleius kazamoto)絶滅危惧ⅠA類(CR)
  • ゴマシジミ八方尾根・白山亜種(Maculinea teleius hosonoi)絶滅危惧Ⅱ類(VU)
  • ゴマシジミ中国・九州亜種(Maculinea teleius daisensis)絶滅危惧ⅠB類(EN)

 さて、台風11号が西日本に接近しているにも関わらず、9日の午前中は曇りという予報を信じて、8日(金)の午後22時、今期4回目となる長野遠征に出発した。今回の目的は、ゴマシジミである。
 現地に9日の午前1時着。駐車場で仮眠し5時から探索開始。初訪のため、まずはポイント探しであるが、生態と生息環境に関する知識と勘ですぐに見つけることができた。ワレモコウが群生する草地を覗くと、ワレモコウや葉に止まる絶滅危惧ⅠA類であるゴマシジミ本州中部亜種を発見。気温15℃。今にも雨が降り出しそうな空模様。どのゴマシジミもじっと止まっているだけである。朝日が差さないので、肝心の青い翅表は撮れそうにもない。とりあえず数枚撮影し、8時に引き上げることにした。
 10日はあいにくの雨(台風)。愛車のオイル交換と点検整備に当てた。土曜日の夜を自宅で過ごし、布団で目覚める日曜日の朝は6月29日以来である・・・
 ゴマシジミは、本年に予定した未撮影種の最後のチョウなので、是が非でも翅表を撮るべく、次の週末に再訪したいと思う。(お盆休みが欲しい!)

 ゴマシジミは、採集者による乱獲も各地で問題になっている。自らは保全に協力することなく、保護・保全に対して勝手な持論を展開し、見つけたチョウをすべて殺して持ち去る採集者たち。仮に一人が1頭しか捕らなくても、百人くれば100頭いなくなるのだ。今や、「昆虫採集」は「自然破壊」と同義語である。
 今回撮影に訪れた地区に生息するゴマシジミも、これまで県内外から来た多くの採集者によって乱獲されており、保護活動を進める地元住民からの要望を受けた松本市教育委員会は、平成25年6月20日に松本市の特別天然記念物に指定した。市文化財保護条例により、市の許可を得ない採集は禁止されている。

 ゴマシジミは、初見初撮影の種で、当ブログのリスト「鱗翅目」で121種類目となる。

IMG_3501.jpg

ゴマシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F3.5 1/125秒 ISO 1000(撮影地:長野県松本市 2014.8.9)

IMG_3502.jpg

ゴマシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F5.6 1/160秒 ISO 1000(撮影地:長野県松本市 2014.8.9)

IMG_3503.jpg

ゴマシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F5.6 1/160秒 ISO 400(撮影地:長野県松本市 2014.8.9)

IMG_3504.jpg

ゴマシジミの生息地風景(撮影地:長野県松本市 2014.8.9)

ゴマシジミとワレモコウ

$
0
0

 ゴマシジミとワレモコウ。狙いは、ゴマシジミの開翅だったのだが・・・

 16日(土)。本州付近に停滞する前線の影響で長野県下は一日雨という予報のため、松本市のゴマシジミを諦め、かろうじて天気の良さそうな山梨県の富士山麓にある草原にゴマシジミ探索に向かった。
 午前5時半。昨年、ヤマキチョウを撮影したポイントに到着すると、雨。ここでは、ゴマシジミの生息は未確認なので、まずは傘を差しながら食草のワレモコウを探すが、ない。見つからない。
 それならばと、富士山北麓の有名な生息地に移動。過去に4回ほど訪れて、ミヤマシジミ、ヒメシロチョウ、スジボソヤマキチョウの撮影はしているが、ゴマシジミは初めての挑戦。しかも、約4,600ヘクタールもある広大な草原のどこに生息しているのか分からない。中央部を東から西へ移動しながらワレモコウを探すが、群落はなく、所々に点々とあるだけ。勿論、ゴマシジミは見つからない。飛んでいるのは、ヒメシロチョウだけである。この日は、敵視する採集者も2人見ただけであった。(この場所は、採集者が団体でも押し掛けてくる。)早々に撤退し、午前11時に帰宅した。

 帰宅後、翌日曜日の天気はどうかと頻繁に予報をチェックしていると、17時の発表で松本市の翌朝に晴れマークが付いた。期待に胸を躍らせながら18時に自宅を出発。諏訪湖SAで食事をして、現地近くの駐車場に22時到着。天気は曇り時々霧雨だが、明日の朝には晴れ間があるはず。天気予報を信じて熟睡。
 17日(日)午前5時起床。天気は、雨、雨、豪雨!2時間ほど待機したが、一向に止む気配すらない。ここまで来て、涼しい所で一晩車中泊しただけのドライブで終了。そんな訳にはいかない。とりあえず生息地に移動し、傘を差しながら草地を覗くと、すぐにゴマシジミを見つけた。時々止み間があると、チラチラと飛びだす。先週よりも数が増えているようだ。ワレモコウの赤もたくさん目立つ。飛んでいるゴマシジミを追いかけると、翅表の青色が垣間見えるのだが、止まると開かない。そして、またすぐに雨、豪雨。この天気では、無理だ。先週、撮影できなかったワレモコウに止まるゴマシジミを撮って、午前9時に撤収。ゴマシジミの開翅は、来年までお預けか?

 通過時間が早かったためか、中央道上りのUターンラッシュ渋滞は、上野原IC手前3km地点から小仏トンネルまで。13時に国立到着であった。途中、夏空が広がっていたのは、甲府付近だけ。異常な気象状況に悩まされる夏である。
 今回の遠征にて、愛車の総走行距離は、157,000kmとなった。

IMG_3505.jpg

ゴマシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F5.6 1/160秒 ISO 500(撮影地:長野県松本市 2014.8.17 7:46)

IMG_3506.jpg

ゴマシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F5.6 1/125秒 ISO 400(撮影地:長野県松本市 2014.8.17 7:47)

IMG_3507.jpg

ゴマシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F6.3 1/160秒 ISO 640(撮影地:長野県松本市 2014.8.17 8:56)

IMG_3508.jpg

ゴマシジミの生息地風景(撮影地:長野県松本市 2014.8.17)

ゴマシジミ(産卵)

$
0
0

 ゴマシジミの発生はそろそろ終盤なのだが、先週、先々週の悪天候が悔しくてたまらず、三週連続三回目となるゴマシジミの撮影に向かった。
 28日(金)22時に自宅を出発し、現地に翌29日(土)午前1時到着。天気は、雨。予報では午前中に晴れマークが出ているので、祈りながら車中泊。朝4時半起床。天気は、雨。ただし、所々に晴れ間が見えるので、とりあえず生息地へ向かう。カメラをセットしていると、何と豪雨。一時間ほど車中で待機していると、ようやく雨雲が抜け、晴れ間が広がってきた。

 草むらに目をやると、すぐにゴマシジミは見つかった。今回の狙いは、翅表を撮ることである。「開けゴマ!」と念じながらカメラを向けるが、なかなか翅を開いてくれない。何頭も追いかけていると、ワレモコウの蕾に産卵する様子を観察し撮影することができた。
 さて、草むらに朝日が当たり始めると、葉上のゴマシジミが翅を開き始めた。ゴマシジミは、地理的ならびに個体的な変異が著しく、日本産シジミチョウ科の中でも最も変化に富むチョウの1種で、翅表は黒縁、黒斑を有する青藍色から全面暗褐色のものまで変異が大きいと言われている。この生息地のゴマシジミは、青い鱗粉がのった青いタイプ(通称:青ゴマ)と青い鱗粉がほとんどない暗褐色タイプ(通称:黒ゴマ)、またその中間のタイプも見られる。雌雄による翅色の違いは、地域差や個体差があり明確ではない。
 先週と先々週は、青い翅表の個体が多く飛んでいた(飛んでいる時に、肉眼で翅表の色を確認した)が、発生も終盤になると暗褐色タイプばかりが目立つ。この暗褐色タイプは、ワレモコウに止まるとすぐに翅を開いたが、目標は、美しい「青ゴマ」だ。
 時間が経ち、気温が上がってくると、ゴマシジミは盛んに飛びまわって、止まらない。時折、花に止まって吸蜜するが、翅は絶対に開かない。ひたすら追いかけて、ようやく青系統の開翅を撮ったが、残念ながら青色の美しいタイプではなく、中間型、しかも翅が擦れて鱗粉もかなり落ちていた。13時まで粘り、最後に、羽化したばかりのようなたいへん美しい「青ゴマ」に出会いカメラを向けたが、翅は頑なに閉じたままであった。

 久しぶりに日焼けした週末。24日(日)は、「日本ホタルの会」の理事会のため、観察と撮影はお休み。来年は、「ゴマシジミ(開翅)」というタイトルが付けられるような写真を撮りたい。

IMG_3509.jpg

ゴマシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F6.3 1/250秒 ISO 500 6:53(撮影地:長野県松本市 2014.8.23)

IMG_3510.jpg

ゴマシジミ(産卵)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F6.3 1/320秒 ISO 320 11:21(撮影地:長野県松本市 2014.8.23)

IMG_3511.jpg

ゴマシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F6.3 1/320秒 ISO 400 11:22(撮影地:長野県松本市 2014.8.23)

IMG_3512.jpg

ゴマシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F6.3 1/320秒 ISO 320 11:21(撮影地:長野県松本市 2014.8.23)

IMG_3513.jpg

ゴマシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F6.3 1/250秒 ISO 200 11:08(撮影地:長野県松本市 2014.8.23)

IMG_3514.jpg

ゴマシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F6.3 1/320秒 ISO 400 11:00(撮影地:長野県松本市 2014.8.23)

IMG_3515.jpg

ゴマシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F6.3 1/250秒 ISO 250 9:34(撮影地:長野県松本市 2014.8.23)

IMG_3516.jpg

ゴマシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F6.3 1/320秒 ISO 250 9:34(撮影地:長野県松本市 2014.8.23)

Viewing all 489 articles
Browse latest View live